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開聞岳へと続く道

ツーリングマップルのページ記号は2003年春以降に発売された新版を基準にしています。

2006年9月2日

枕崎市〜知覧町

海を見下ろす坂をゆっくりゆっくり登ってゆくと、やがて勾配は平らに近くなり、はるか向こうまでまっすぐ続くなだらかな下りに転じる。右手後方の海から吹く追い風を背に受けながら、一路東へとペダルを回して進むと、道脇の木々でとぎれとぎれになりながらも、遠くかすかに見えていた開聞岳が、その姿をはっきりと現してくる。あのふもとが今日のゴール地点だ。

「このペースなら、あと2時間くらいで着けるかな・・」

ついさっき着替えたばかりなのに、もう汗が胸元からじっとりと吹きだして、新しいTシャツがぺたりとはりついている。出発したばかりの時は路面を吹き渡る風に多少なりとも涼しさを感じ、もう季節は秋だなあと思っていたのに、ここ南薩はまだ夏の熱気に満ちている。

海を見下ろして走る

ほぼ平坦な道をトップギアで毎分70回転・時速25キロで快調に走りながら、フレーム中央のボトルケージから500mlボトルを抜き出して水分補給。別に停まって飲んでもいいのだけど、こうやった方がレーサーみたいでカッコイイ。この季節ではだいたい10分に1回のペースで口に水を運び、喉を潤しつつ走るようにしないと続かないから、いちいち停まるのが面倒という事もある。

自転車では、ちょっとバテ気味でも気持ちが高揚していると、その場の勢いで何も飲まずに走りつづけがちになるもので、気をつけていないと水分不足に陥りやすいところがある。これを防ぐには、喉が渇きを訴えてくる前に少しずつこまめに飲んでおくのがコツだ。さんざんガマンしたあげく、休憩時にまとめてがぶ飲みしても、人間の体は喉の渇きを感じだ時にはすでに数%の水分が失われた後で衰弱が始まっているらしいので、その時になって飲んでも生理的には手遅れだと言われている。

一般的な自転車用の500mlボトルで、だいたい1時間も走ればカラになってしまうから、その都度補給する事になる。いつも走るコースなら水汲みの出来る公園や店先をチェックしておけるが、こういう初めての道では先が読みにくい。でも道脇の民家でおばちゃんに礼儀正しく頼めばたいてい庭先の蛇口を貸してもらえるから、あまり不安は感じていない。

水ばかり飲んでも、発汗でミネラルその他が不足してくるから、ポケットに入れた行動食も時々かじるようにしている。昔気質の山屋さんなら氷砂糖、現代風ならゼリー状サプリメントとかだろうけど、作者はお菓子のコアラのマーチが好みで、遠出の時はいつも持ち歩いている。甘〜いチョコはとても落ち着くし、菓子の薄皮におおわれているから中身が溶けてもベタベタしない。おまけにひと箱100円なので買いやすいのだ。欠点は水に濡らすと一気にふやけて袋の中がえらい事になるのと、一度にいくつもかじると、口の中がやらたと乾いてしまうところか。

枕崎空港の看板を過ぎ、水沢川に向かってやや狭くなった下り坂を駆け下りたら、枕崎市から知覧町へと入る。お茶の栽培、そして戦時中に特攻基地があった事で全国的に有名な町だが、少し縦方向に長いので、基地跡に作られた特攻平和会館はここから20キロほど北になる。

ツーリングマップル九州P.59枕崎7-E 旧版P.82指宿5-B

今回、出発の何日か前に、吹上浜の自転車道が終わる南さつま市街地あたりから川辺と知覧を経由し、枕崎を通らずに三角形の斜辺よろしくショートカットすれば、目的地の開聞岳まで早く着けるかも?と思い、地図でじっくり調べてみたのだが、内陸のあたりは意外と標高が高くなっていて自転車向きとはいい難いのだ。最大ピーク150メートルを筆頭に、90メートル級の峠が前後に数カ所、前衛峠のアップダウンも70メートル以上の落差が何カ所かあって、これでは地図上の距離が多少短くても足(脚)を踏み入れるのは尻込みしてしまう。

「そういえば、もう列車は出発した頃かな?」

現在時刻は午後2時40分。枕崎駅からの午後2本目の便はちょうど今頃出発しているはずだ。開聞までは列車で40分ほどかかるから、この先どこかで出会う事になるかもしれない。

知覧町〜頴娃町

知覧に入ってからさらに幾つかのアップダウンを過ぎ、加治佐川にかかる橋で頴娃(えい)町へと入ってゆく。自然の川の流れがそのまま町境になっているあたり、素朴な風景とも相まっていかにも田舎っぽいのんびりとした感じを受ける。

ツーリングマップル九州P.59枕崎7-F 旧版P.82指宿5-C

この頴娃という地名をフリガナなしで正しく読める人は、おそらく鹿児島県人以外ではほとんどいないだろう。この先にあるお隣の指宿(いぶすき)も難読地名と言えるが、砂蒸しで有名な温泉地だし、先頃日韓首脳会談も開かれてかなり知名度は上がったと思う。昔はユビヤドとか読む人も時々いたものだが。

ここ頴娃町を越えれば、もう次は最後の指宿市(旧開聞町)となり、残りの行程は15キロ強を残すのみだ。空模様は少し雲が多いが、とりあえず雨が降り出しそうな感じはない。このまま行けばキャンプ場まで雨宿りはせずに済みそうだ。しかし右ヒザの調子はあいかわらずで、まだガマン出来るレベルではあるが、ペダルの上に立って路面の段差をやり過ごす時、衝撃でちょっとシクッと来るようになったため、枕崎を出た頃とするとかなりペースが落ちている。このあたりは高低差はそれほどないものの、細かいアップダウンが連続していて、路肩もちょっと雑になっているので下りでもスピードを出しにくく、少しイライラしてしまう。

畑の中をまっすぐ続く指宿枕崎線の線路

歩道沿いにいかにも南国といった雰囲気の背の高いソテツがズラッと植えられている直線路を走っていると、線路を跨ぐ短めの陸橋に出た。少し高い位置にあるので見晴らしもよく、見渡す限り一面の緑の畑が気持ちいい。おそらく焼酎の原料なんかに使う芋畑と思われる。ここでちょっと停まってザックを降ろし、小休止する事にした。

腰をウーンと伸ばしつつ橋の下を見やると、畑のまん中をまっすぐな線路が遙か向こうまで延びていて、レールの消失点に近いあたりに白っぽい車輌が停まっているのに気付いた。あれはおそらく午後2時半に枕崎駅を出発した、例の2本目だろう。

ツーリングマップル九州P.59枕崎7-H 旧版P.82指宿5-D

国道と平行になったところでザーッと追い越されるようなドラマチックな出会いを想像していたが、この先線路は海側の奥の方へと引っ込んでいるようで、そういう場面は期待出来そうにない。列車がこの橋の下に来るまで、もうちょっと休憩を延長する事にしよう。

やがて列車は向こう側にある小さな駅を出発し、少しずつこっちに近づいてきた。しかし広大な畑にはなんの建物もないせいか、何だかカタツムリが這っているような感じの速度にしか見えない・・。そのうちゴトンゴトンと、今にも線路を踏み割りそうな衝突音を響かせて、2両編成の素朴なディーゼル車が間近にやってきた。作者は特に鉄道好きという訳ではないが、遠くから列車が近づいてくる時の不思議なワクワク感はなんとなくわかる。携帯カメラを構えつつ、この一瞬だけ気分は鉄ちゃん(鉄道マニアの俗称)になっていた。

通過する列車を真上から見る

ところで子供の頃よくやった遊びで、近所の川の鉄橋そばに立ち、走り来る列車に向かって敬礼をすると運転手さんもちゃんと敬礼を返してくれるのがとても楽しかったものだが、その事を瞬間的に思い出し、陸橋の下を通り過ぎる直前に列車に向かってパッと敬礼をしてみた。すると車窓の向こう側で白い手袋がスッと動き、敬礼を返してくれた(ように見えた)。気持ちが通じた気がして嬉しくなった反面、オレもいい歳をしてアホな事をやっているなあと思ったが、いつのまにかヒザのシクシクはほとんど気にならなくなっていた。

畑のまん中の線路と別れると、今度は右手に大きなタンクの群れが見えてきた。塔の上には焼酎さつま白波のロゴマーク。薩摩酒造頴娃蒸留所の巨大な工場だ。たいていの焼酎蔵はどこのブランドだって町工場程度の規模しかないから、さすがは鹿児島焼酎のトップブランド、芋焼酎の生産拠点としては破格の規模と言える。工場の前で深く息を吸うと、ほんのり甘い芋の香りがしてくるような気さえする。

頴娃町の役場前あたりは、枕崎から走ってきたR226の道沿いの中では一番開けている印象で、歩道の幅も広く走りやすい。しかし市街地を抜けると高低差のある大きめのカーブがいくつか続き、調子よく走っていた後だけに、ちょっとしんどい気分になる。


開聞岳を間近に望む展望台

左手間近に崖が迫った上り坂の右カーブを登り切ると、正面に大きくそびえる開聞岳が見えてくる。この場所はテレビの旅番組でもよく使われる、ドライブ中に開聞岳を望むベストビュー・スポットであり、天気のいい日に走っていると、カーブ手前の崖の向こうからどーんと大きく現れるディープ・グリーンの三角錐に、しばし心を奪われるほどだ。

ツーリングマップル九州P.62開聞岳1-H 旧版P.82指宿6-E

カーブの海側に松林に囲まれた駐車場と展望台があるので、そこに入って記念写真。今日はちょっと曇りがちで開聞岳のてっぺんにも傘がかかっているが、南薩摩のシンボルにふさわしい端正で素朴な山裾は何度見てもいいものだ。それに自分の脚でここまで来れたのが何よりうれしい。

「さあ、あともう少しだ!」


頴娃町〜指宿市・開聞岳のふもとへ

指宿市に入った事を示す看板

展望台をすぎると、まもなく道は指宿市に入っていく。現在時刻は午後3時半、もう着いたも同じとはいえ、まだ残り3,4キロ、駅にして1区間半ほどある。もう脚の方はかなりしんどい状態で、普通ならそのまま中間ギアで踏んでいけるくらいの勾配も、いちいち2速や、場合によってはローギアまで使わないとペダルの回転が保てなくなってきた。まあ、ここまで来たらもう焦る事はない。今夜のメニューでも考えつつ、ゆっくり進むとしよう。

十町のあたり、開聞駅を過ぎたら信号のある十字路が見える。左方向は池田湖、右に入れば今日のゴール、開聞岳のキャンプ場への入り口だ。やれやれ、やっと到着だ・・。

キャンプ場に向かう前に、国道沿いにあるAコープで食料の買い出しをしておく。いつも入り口に野菜の安売り棚があるのだが、今夏は出来があまり良くないのか値段も少し高め。このへんの事情は作者の地元と同じく、どこでも変わりないようだ。店内をひとまわりしてカゴを満たし、ついでに500mlの缶ビールを6本購入。昔と違って最近はお酒自体ほとんど飲まない習慣がついているのだが、今日はまあ特別という事にしよう。

これらを全部ザックのすき間に詰めたところ、当たり前だが猛烈に重くなってサドルが思いきりケツに食い込でんくる。たまらず少し走ったあたりでまた全部バラし、自転車側のキャリアに積み直した。

「うーん、これ明日の朝までに全部消化出来るかなあ?」

さて、あとはキャンプ場に向かうだけだ。
しかしここで思わぬ難関が待っていた。ここのキャンプ場は国道から踏切を渡った向こう側1キロたらずの所にあるのだが、これがものすごい上り坂なのだ。今までオートバイで来ていた時にはさほど気にしなかったが、いざ自分の脚で上がるとなると、今の状態ではとてもじゃないがペダルを踏んでは進めない。仕方なく押して歩く事にしたが、これだってかなりの難行で、途中で何度も歩を停め、ヒザをかばいつつザックを担ぎ直し、フウフウ言いながら額の汗を拭った。

「くそう、なんでこんな高い場所に作りやがったんだ!」

坂の勾配はかなり急だが、一応は麓という名目なので標高自体はそれほどでもない。それでもハンディGPSの測定では最高地点125メートルと出たから、なんとこのゴール地点が全ルート中もっとも高所だった事になる。ハンディGPSに記録された標高グラフを見ても、今日の午後からずっとR226で乗り越えて来た数多くのアップダウンもこの坂に較べればひっかきキズ程度にしか見えない・・。

ツーリングマップル九州P.62開聞岳2-I 旧版P.85開聞岳1-E


開聞岳のキャンプ場

チェーンソーで彫刻をする職人さん

敷地内へ入ると、右手のイベント用建物の駐車場から2ストロークエンジン独特の高い音が響いている。近くに行ってみたら、何やら丸太を削って何かの形を作っている途中らしい。この日のためにMさんが県外から招待したという、チェーンソーを使った彫刻家とはこの人たちの事だろうか。豪快なエンジン音を響かせながら、すさまじい破壊力を秘める刃先が、なんとも繊細に動物の姿を次第に現してゆく様は圧巻だ。

面白いからこのまま見ていたかったが、背中の重いザックも気になる。早くどこかに落ち着いて、この重荷から解放されたい。ついでにグシャグシャになった服を着替えて、汗もすっきり洗い流したいものだ。

場所を探して場内をフラフラしていたところ、このオートキャンプ場にいかにも不釣り合いな自転車野郎を見つけたMさんの知人の方に案内され、とりあえず数あるオート区画のひとつの隅っこに今夜の寝場所を定め、荷を降ろす事が出来た。もう周囲のサイトには色とりどりの大型テントやタープがどんどん立てられている、作者も数年来愛用の小さな安物テントをおっ立てるが早いか、クソ重かったザックその他の荷物をすべて放り込み、あとは着替えと石鹸タオルだけ持って管理棟裏手のシャワー室にダッシュで飛び込んだ。すべての荷物を降ろした我が20インチはまるで羽毛のように軽く、ペダルを踏み込むと空まで飛び上がりそうな勢いである。汗や泥で汚れた衣服を脱ぎ捨て、熱水を頭から思いきりかぶったところで、ようやく生き返った心地になれた。

その後、居住まいを正してMさんにご挨拶。直接お会いするのは1年ぶりくらいだったが、お元気そうで何より。実はMさんは足が思うように動かせないので、普段の生活では杖や車椅子が必要なのだが、ありがちな悲壮感など微塵も感じさせない笑顔とアクティブさはあいかわらずで、逆にこちらが元気づけられるほどなのだ。作者を含め、この場にMさんの呼びかけでいったい何十人のアクティブ・キャンパーが集っている事だろう。これもひとえに彼の人望だと思うのである。

隣の会館からは何やらひっきりなしに生演奏の音が響いているのでちょっと覗いてみると、こっちでは若い衆がスタジオライヴよろしくロックの演奏中。どうやら息子の友達ご一同らしい。当の本人はどこだろうと探していると、なんと目の前で演奏しているバンドの一員がそうではないか。なかなか本格的で、こういう芸も持っていたのかと感心ひとしきり。だが大音響のビートがオッサンの耳にはちょっときつくなったので、早々に退出させてもらった。

表ではもうチェーンソー・カービングが完成に近づいており、歯の一本一本から首周りのシワ、足のつめ、尻尾にいたるまで克明に特徴を捉えた「カバ」の姿が現れていた。ろくに下書きもせずチェーンソーだけでここまで作り込むとは、もはや神の領域のようにも思える。

その後、この職人さんたちを近くの温泉まで道案内したついでに、露天温泉につかりながらいろんなお話を伺う事が出来た。本職はログビルダー、つまり木を使ってログハウスを建てる職人さんで、このような動物の彫刻は本来腕試しの余技のようなものらしい。ちなみに、チェーンソーで作者の似顔絵を直接作る事は出来ますかと訊いてみたところ、現物を見ながらやるのはかなり難しく、絵に描けて誰でもわかる特徴のあるものが向いているのだそうだ。そのかわりイメージ出来ればたいていのものは下書きなしで実現出来るそうで、やっぱりすごい技術だと思う。

おいしそうな料理たち

さて、夜も更けていよいよパーティの始まりである。作者はいつものキャンプ会のつもりで、ちょっとした自前の食材は買って来てあったのだが、今夜はとても出番はなさそうだ。何しろメインのロッジの奥から、あとからあとから出てくる膨大かつ旨そうな料理と飲み物の海に溺れそうなくらいで、「も、もう参りました」と思わず言いたくなるほど。

そして料理以上によかったのは、集まったいろんな方面の方々と面白いお話をする事が出来た事だろう。とてもここには全てを書けないが、おなじみツーリングやキャンプ関連の話題から靴の話、カバンの話、火おこしの話、天気の話に人の話、もうこちらもおなか一杯という感じなのである。

夜遅く、日付が替わるまで語らった後は自分のテントに戻り、そろそろ寝る準備を始めよう。お隣のテントの住人が木の根っこを抱くようにして芝生に寝っ転がっていたのを起こしたりしながら、酔い覚ましのコーヒーを一杯。そのうちまぶたが自然に重くなり、ザックを枕に朝まで熟睡。久々に心地よい野営をする事が出来た。


移動距離
107.58km 所要時間 8時間44分
ガソリン
約50円/0.3L(ガソリンストーブ用・出発前にオートバイのタンクより抽出)
温泉など
450円(国民宿舎かいもん荘)※2007年6月いっぱいで閉館
200円(キャンプ場のシャワー)
食費など
3,736円
合計
4,436円

枕崎市街地(休憩後)から開聞岳ふもとまでの走行データ

走行距離29.2キロ/所要時間2時間25分/平均時速12.04キロ

GPS走行データ GPS走行データ

※このグラフはGARMIN製ハンディGPS・etrex SummitのTrackデータを元に、GPSe (MacOS9版)で処理した画面を着色加工したものです。

2006年9月3日

出発の朝

キャンプ場風景

野営の朝はいつも早い。目覚ましもかけてないのに、決まって午前5時には目が覚めるのが不思議だ。もっとも前日の疲労によっては二度寝してしまう事もあるが、あれだけ走ったわりには体調もよく、足の張りもあまり気にならない。

近くの蛇口で顔を洗い、コメをといで朝食の準備。たぶん向こうのロッジに行けば昨夜の残りがいっぱいあるだろうが、やはり朝は炊きたてのご飯が食べたい。ゆうべはろくに出番のなかったガソリンストーブはまだたっぷり燃料を残しており、帰り道のデッドウエイトになるのは確実だ。といってそこら辺にガソリンを流す訳にもいかないだろう。

ご飯をむらす間に、昨日買っておいた豚肉をよく炒めて卵やネギと合わせ、即席の豚丼にしてハフハフ言いながら食べる。夕べはキャンプにありがちな油っこいものばかり食べていたせいか、朝はちょっと胃がもたれ気味になるかと思いきや、案外スッキリとしている。今日もいっぱい走らねばならないのだし、今のうちにスタミナをつけておこう。

テントをたたんで荷を積み込み、出発の準備を整えてからロッジに向かうと、もうこちらでもみなさん起き出してきており、昨夜の後かたづけと朝食の準備が大人数で行われている最中だ。あれだけ盛り上がった会場、さぞ次の日の掃除は大変だろうと思っていたが、そこはやっぱり手数の多さで、見る間にどんどん奇麗になってゆく。これだけ大規模にやっても朝10時のチェックアウトという決まりはそのまま適用されるらしく、キャンプ場側にはもうちょっと融通を利かせて欲しかった気もする。

余りものをつまみながら、昨夜知り合った方々とまたいろいろ話しているうち、そろそろ出発の時間が近づいてきた。Mさんやまわりの方々にお礼をのべ、またの再開を期し、ずっしりと重くなったペダルを踏み込んでキャンプ場を後にした。

「さようなら!またどこかでお会いしましょう!」

チェーンソーで作った二羽の鳥 ログハウスと自転車

開聞岳のふもと〜西大山駅へ

昨日あれだけ時間をかけてエッチラオッチラと歩いて上った急斜面も、荷物満載の自転車で下るとなるとあっという間におしまい。踏切を越えて交差点を抜けると、これまた昨日走ってきたR226に出る。現在時刻は午前10時10分。さて、今日はどういうコースで帰ろうか・・

昨日は頑張ってR226を自走したのだから、今日は最初から列車に乗り込んで輪行するのにも抵抗はない。すぐ近くにある指宿枕崎線の開聞駅からだと、次の枕崎方面への便は午後12時7分まで1本もないようだ。午前10時50分というのもあったが、これはちょっと先の西頴娃駅で折り返すから乗ってもしょうがない。出発までの2時間近く、何をして時間をつぶそう?

Aコープの斜め向かいにあるコンビニに寄り、ジュース類と軽い食料の買い出しをしてから、R226をさらに東へ進む事にした。ここから3つ目の駅、距離にして6キロ程の所に西大山駅というのがあり、本土最南端の鉄道駅として全国的に知られている。そこから眺める開聞岳が作者はとても好きで、こっち方面に来た時には必ず立ち寄るお気に入りのスポットだ。もちろん自転車で乗りつけるのは今日が初めてだから、きっといい記念になるだろう。荷を詰め直したザックを背負い、一路西大山駅へと進路をとった。