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曽木の滝発電所遺構・その後

※文中の()内の数字は、昭文社刊ツーリングマップル(2000-2001年度版)のページ/エリア番号です。

※文中の N やE で始まる一連の数列はハンディGPSやGPS携帯による経緯座標データの実測値です(測地系はWGS 84を使用)。

2004年7月12日

世は遺構ブーム?

遺構へ続く道

今月初め頃だったろうか、作者もよく寄せていただくツーリング系サイトの掲示板にて、曽木の滝発電所遺構を週末のツーリングで訪ねてみたいという書き込みがあり、失礼ながらあんなマイナーな場所になぜ・・?と思ったのだが、その方の話によると今発売中のバイク雑誌「培倶人」Vol.18(枻出版社)にこの発電所遺構の写真が大きく載っているというのだ。

さっそく書店で立ち読み(この手のオシャレ系バイク雑誌は興味本位で買うにはちと高い)してみると、確かに巻末のカラー頁に雰囲気のある写真が大きく取り上げられていて、周辺の様子もいろいろ書いてある。しかも作者の昨年のレポとは異なり、遺構のすぐ近くまで、それもバイクで入り込んで撮影しているではないか。

作者が前回訪れた時にはこの対岸の遺構一帯が河川修復の工事中で、立入禁止のバリケードがあちこちに立てられていた。さらに遺構自体いつ崩れるかといった風で、安全のため近くには寄れないとも聞いていたので、あえて深入りはしなかったが、このように雑誌に載るくらいなら、もしかしたら近づいても大丈夫なのかもしれない・・さらに日を置かずして地元のTVニュースでもこの遺構がほぼ同じアングルで取り上げられ、なんとなれば近所のオバチャンがステージ部分をウロウロ歩き回ったり、アーチ状のレンガ窓から中を覗いてニコニコしているのだ!

そんなこんなで、今までこの場所に興味を持った人には「危ないから対岸の展望所でどうぞ」などと言っていたのがなんだかアホらしくなってきたのだが、自説の変更をする前にまずこの足で、近くまで行ってみなくてはなるまい。


対岸の細道へ

遺構を見下ろす

遺構へ続く道は特に案内看板などないが、そのへんのオバチャンに訊けばすぐ教えてくれる。今時分は夏草がいっぱい繁っているが、道もしっかりしているし、途中には新しくコンクリで補強された駐車場や車回しもあるので、バイクはもちろん自家用車でも気軽に入っていける。牛小屋を右手に見ながら道を下り、川面に出たつきあたりを右に行くと、例の印象深い三角形が下り坂の向こうに見えてくる。

(九州:P63/F-6)

N32°00'38.3'' E130°33'49.2''(WGS 84)

途中、左側にかなり古そうな石とコンクリの混成で造られた小さなアーチ橋を見つけた。よく注意していないと夏草に埋もれて見落としそうだが、これも元は発電所と同時代のものかもしれない。もしそうだとしたら、発電所の従業員は毎日この橋をわたって通勤していたのだろうか・・?

ここらあたりに来ると、ダムの満水時にはほとんど水没する領域なので、地面も湿った泥でおおわれ、革靴などではすべりやすい。砂利を敷いてある車道はいいが、遺構の建っているステージ部分は草がすごく深くて虫も多いから、半ズボンやサンダル履きでは立ち入らない事だ。特に今の時期、ヤブの中でマムシを踏んづけて怒らせたって文句は言えまい。

三角屋根を下から見上げる

それにしても、間近に見る遺構はやはり迫力モノだ。対岸の展望所からだと細かい色の具合はよくわからないが、これだけ近づくと確かに茶色いレンガを一個一個積み上げて作られているのがよくわかる。表面もそれほど奇麗ではなく、長年の侵食や流木の打痕か何かで傷だらけ。

メイン部分を下から見上げる。三角屋根の造形が見事だ・・
 このあと秋の声を聞く9月頃にはふたたびダム湖の貯水が始まり、最上階の窓いっぱいまで水位が上昇する。そのまま翌年の梅雨前まで水の中で過ごすわけだが、そんな水浸しと真夏の乾燥を繰り返す荒っぽい保管状態で、このレンガ造りの建物がよく今まで倒壊しなかったものだ(というか、半分以上はもう崩れ去っているわけだが)。地元もこれを観光資源として本格的に開放する気があるなら、せめてこれ以上崩壊が進まないよう何らかの対策をしておいて欲しいと思う(※注1)


やはり安全とは言えない

危険をしめす看板

この日、入り口近くには工事現場用の立入禁止バリケードが無造作に倒してあったのだが、軽トラが2台ほど先に入っていて、オジサンたちが何人かでヤブを刈ったり川の中の網を見て回ったりしていたから、たぶん彼らが仕事をするため横にどけていたのだと思う。満水時はともかく、夜間など万が一の事故防止のため一応立ててあるのではないだろうか。このあたりの仕切線がどうも曖昧で、現地にも「近づかないでください」と書いた看板が1枚きり。大口市のホームページなどを見ても明確に立入禁止とは謳っていない。

すでにTVや雑誌でハデに紹介され、これから今まで以上に多くの人がこの遺構を訪れるだろうが、やはり間近で見上げるには少々危険なシロモノである事にかわりはない。ツーリングでここを訪ねるさいには安全に十二分に注意して、ほどほどの距離感をもっておごそかに見つめていただきたいと思う次第である。

おしまい


※注1-1
あとで調べてみたら平成12年度に補修工事があったようです。