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GIANT ESCAPE R3 (2008)・メンテナンスについて

目次

チェーンの注油

チェーンの注油サイクルはちゃんと計った事はありませんが、ペダルを踏み込んだ時にシャラシャラという音が目立つようになってきたらやる程度で、走行距離で言えば数百キロに1回程度でしょうか。ただし雨の中や雨上がりの濡れた路面を走った後は、その日の夜か次の日くらいにすぐにやるようにしています。水しぶきの中を走ると油分が流れてしまい、サビも出やすいからです。

段ボール紙で後輪をカバーし準備完了

自転車を立てて置き、チェーンとホイールの間に段ボールか何かを差し込み、タイヤやリムに油が触れないよう保護します。センタースタンドの場合はクランクが当たって回せませんので、スタンドをはらった状態で壁等にサドルを当てて立てかけます。


目立つ泥汚れを歯ブラシで除去

注油の前に、まず汚れを掃除します。プレートの表裏にこびりついている泥汚れやサビがあったら歯ブラシ等で除去し、全体をウエスで拭きあげる程度でOK。あまり神経質にやる必要はないです。


ローラー部分にひとしずくずつ垂らしてゆく

使うオイルはその辺のホムセンでも手に入る、ごく普通の自転車用チェーンオイル240mlサイズでもう何年も使っていますが、まだなくなる気配はありません。

油をさすのはピンがある(曲がる)部分のみ。とりわけ内側と外側のプレートが重なっている隙間に油をしみ込ませるようイメージしつつ、オイルを一滴ずつ垂らしてゆきます。容器をいちいち押して出さなくても、傾けてノズルの先端部にじわっと出てくる程度の量で十分。これをピンの数だけ(ノーマルの場合110箇所)ぐるりと1周して行います。スタート地点のピンにマジックか何かで印をつけておくとわかりやすいでしょう。

面倒がってクランクを回転させながらダーッと一気にぶっかける人がいますけど、細かい部分にロクに浸透してくれないし、オイルも飛び散って無駄になるしで良い事はありません。面倒でも一カ所ずつやった方がいいです。110箇所といってもほんの2、3分で終わります。


ひとまわり注油し終わったら、余分なオイルをウエスで拭きとって終了。出来れば走る前の日にここまで済ませておき、一晩浸透させ、次の日走る前にもう一度拭きとっておけば、余分な飛散も最小限で済みます。

自転車雑誌などを見ていると、近頃はチェーンを丸ごとつけ置きしたり、大げさな専用ブラシやケミカル洗浄剤でピカピカになるまで洗いあげるのが流行のようですが、どうせ数回走ればまた路上の埃などで元通りに汚れるし、チェーンやギアの寿命が劇的に伸びるという訳でもなく、ぶっちゃけ何のためにそこまでするのかよくわかりません。ひょっとしたら洗浄キットを売るための雑誌の宣伝でしょうか?
目的はともかくとして、環境にいいはずの自転車に、大して必要でもないケミカル剤や洗浄油をバンバン消費し、余計な廃棄物を生み出しているのが一番気に入らない点です。

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リムのブレーキ面の研磨

荒れたリムのブレーキ面

長く乗っていると、ブレーキシューとリムの間にホコリや泥水、あるいはリムそのものが削れて出来た微細な金属粉などを巻き込んで、リムのブレーキ面がザラザラに荒れてくる事があります。これを放っておくとブレーキのタッチが悪くなる一方ですし、制動力も低下してくる筈。そこで時々、荒れたブレーキ面の研磨作業をやってあげます。


ゴム研磨やすりで磨く

研磨と言っても大げさな道具は使いません。百均で売っている錆び取り用のゴムヤスリや台所用ナイロンたわし等で、荒れた面をていねいに擦って均します。アルミのカスが大きな固まりになってこびりついているようなのは、刃物手入れ用のオイルストーン(砥石)で慎重に削り落とします。

あまり熱心に擦りまくると、かえってリムの寿命を短くしてしまうので、指でなぞってザラザラ感が小さくなる程度で十分です。自転車のリムはある意味消耗品であり、傷付きや摩耗はどうしたって避けられませんから、いちいち真っ平らになるまで磨き上げる必要はありません。


リムに大きな傷が入ったり、ザーッと耳障りな異音が出る時は、たいていブレーキシューに食い込んだ金属カスが原因。ブレーキシューの当たり面の掃除も忘れずに行うようにします。

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ヘッドパーツのオーバーホール

毎日のように自転車に乗っていて、簡単な修理やメンテナンスなら自分でやってしまえる人でも、ヘッドパーツ(ステアリングの回転部分)は案外と長年手つかずのままではないでしょうか。ホイールやBBと同じようにボールベアリングを使った回転部ですが、高速でグルグル回るわけではないので、中のグリスが少々流れたりホコリが混じったりしても、走行中に不都合を感じる事は少ないかと思います。

しかし一度開けてきれいに掃除し、給脂したのち調整し直してみると、驚くほど操縦性が変わるものです。さほど難しい作業ではありませんから、年に1回くらいはやってみましょう。ESCAPE R3のヘッドパーツのベアリングは一般的なママチャリとほぼ同じ構造なので、分解も簡単です。


黒い外周リングと緑色リングの間に突っ込み

ママチャリ系とちょっと違う点は、セミカートリッジ式と言ってパーツ脱落防止のためのストッパーリング(緑色の輪)がある事で、分解するにはこれを外す必要があります。といっても大げさな工具は要りません。細めのマイナスドライバーをすき間に突っ込んで起こせばめくれます。外周のリングにはそれほど深くはまり込んではいませんので、あんまり力を入れてグイグイひっかくと傷が入りますので注意。普通に「クイッ」で十分です。


ドライバーの柄を外側に起こすようにしてかき出す

ストッパーリングが外れたら、玉押しリテーナーベアリング(鋼球がセットされている円形の金属枠)を抜き取り、古いグリスをクリーナーや灯油などできれいに洗浄し、新しいグリスを詰めたら元通りに組み直し、調整して終了。


ヘッドパーツの調整

まずはヘッド部分がきちんと組み付けられているか、車体をゆすったりハンドルを切ったりして確認します。途中で引っかかったり斜めになっていると、ヘッドの下とフォークとの間に不自然なすき間が出来ます。


ハンドルステム、スペーサー、トップキャップを入れ、各ボルトを軽く締めます。ここではまだ仮締めのままにしておきます。


両手でハンドルを握り、前ブレーキレバーを引いて前輪ロック状態で車体を前後に揺らし、ヘッドのベアリングがカタカタとずれる感触が消えるまで、トップキャップのボルトを少しずつ(角度で20〜30度くらいずつ)締め込んでゆきます。一気にグイッと締めてはいけません。


ヘッドを手でつかんでズレを感じる

ブレーキやハブなど別の部分から発生している微妙なガタを、ヘッド部分からのガタだと勘違いしてしまい、すでに適切に締まりきっているのにもかかわらず、限界を越えて延々と締め込んでしまった事が以前ありました。

これに惑わされないよう、ヘッドの回転部分を指で覆うようにつかんで、継ぎ目のズレを感じながら作業すれば確実です。

両手で抑え込めないので、代わりに胸をハンドルに押しつけるようにして荷重をかけます。


ガタがきれいに消え、なおかつ車体を傾けた時にハンドルが軽く左右に首を振るのがベスト。締め込み過ぎたかなと思ったら、トップキャップのボルトを緩めて前輪を少し持ち上げ、ストンと落とせばまた広がってくれます。


変速用ワイヤーのアウターを外しておく

ESCAPE R3のヘッド周辺にはワイヤーアウターの支持部が多く設けられているため、通常の状態ではアウターの曲げ抵抗に邪魔されて、ハンドルが自然に回転しているかどうかのチェックがしにくいように思います。

そこで前後のシフトワイヤーとリアブレーキの合計3カ所をアウター受けから外せば、抵抗がフリーになって動きがチェックしやすくなります。

変速位置を一番緩い方向(前はインナー、後ろはトップ)に回しておけば、手で引くだけで簡単に外せます。


うまく決まったら、ハンドル位置をまっすぐにします。前ホイールを脚ではさみ、上から見てステムとタイヤが同じ直線上に並ぶよう、ハンドルの端を軽く叩きながら微調整します。

まっすぐになったのを確認したら、ステムの2本の固定ボルトを本締めしてきっちり固定します。片方だけを一気に固く締め込むと圧力が不均等になってしまいますので、2本のボルトを交互に、ゆっくりと均一に締めてゆきます。

以上で作業は終了ですが、念のため断続的に前ブレーキをかけながらの走行チェックもしてみて下さい。


締め付けトルクは適正に

締め付けトルクは適正に

一般的な軽合金製のハンドルステムの場合、ステムクランプ部分の締め付けトルクの指定は5〜8N・m程度が多いようです。ここで使っているシマノプロ製アジャストステムもボルト近くに8N・mの表記が見えます。これはボルトに長さ1メートルのレンチを差し込み、端に8N(ニュートン)の力をかけた際に発生する回転力(8N × 1m)で締めなさい、という意味です。

しかしながら、長さ1メートルもある六角レンチなんて、ホームセンターでもちょっと置いてありません。そこでトルクの計算式が生きてきます。

トルク(回転モーメント)とは、力 × 回転中心からの距離で表されます。よって距離、つまりレンチの長さが半分になれば必要な力は2倍に、逆にレンチの長さが2倍になれば半分の力で済む、というわけ。

この法則に従えば、長辺の長さが10センチしかない一般的な六角レンチを使って8N・mを発揮させるためには、レンチの端にかけるべき力は、8 × ( 100 / 10 ) = 80ニュートンと算出されます。

1ニュートンをキログラム単位で表すと約10分の1の0.102キログラム(f)。よって80ニュートンは約8キログラムとなります。

「ボルト1本締めるのに8キログラムものパワーが必要なのか」とお思いになるかもしれませんが、この程度は女性の細腕でも簡単に発揮出来ます。試しに家庭用の体重計を使って、針が8キログラムを指すよう手で押してみて下さい。「たったこれだけでいいの?」と、おそらく拍子抜けされる事と思います。

これは自転車に限った話ではなく、オートバイや車の整備作業においても、メーカー指定の締め付けトルクは我々が想像しているより小さいものがほとんどで、感覚だけで締め込むとたいていオーバーしてしまいます。

「強く締まっているぶんには別にいいじゃないか」なんて言う人もいますけど、次に外す時に抜けなくなったり、ステムやコラムを微妙に変形させてしまったり、最悪の場合金属疲労で走行中にポッキリ折れたりと、ロクな事がありません。必要以上な締め込みはトラブルの元、十分注意しましょう。

参考・Bandit250・締め付けトルクについて

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リアスプロケットの脱着

工具を駆使してロックリングを回す

まずスプロケット戻し工具のチェーンをロー近くの大きめのギアに巻き付けてギアが空転しないように押さえた上で、スプロケット中心部のロックリングのミゾにロックリング工具をかませ、スパナでもって反時計回しにグイッと回します。

※この部分でメーカーは「戻し工具は中段よりも小さいギアに掛けなさい」と指示しています。おそらく強トルクによるねじれでパーツが痛むのを懸念しての事でしょうが、作者の手順でもこれまで問題が起きた事はありません。
気になる方はメーカーの指示通り、5速ギア以降の小さいギアに引っ掛けるようにしてください。

ロックリングは普通のネジと違ってギザギザの回り止め加工がしてありますので、回す時にはガリガリッという強い抵抗があります。

無事ロックリングが外れたら、フリーボディ(回転する円筒部分)からスプロケットを全部抜き取ります。周辺はかなり汚れていると思いますので、新しくスプロケットを入れる前にきれいに掃除し、スプロケットがはまる面にはグリースを薄く塗っておきます。

フリーボディに刻まれたミゾは全周に渡って等間隔ではない点に注意。変速効率の向上のため、全ての歯車の位置関係がきっちり決められているからです。


ロックリング回しで締め付け

取り付け時はロックリングを時計回しに締め込むので、スプロケット戻しによる固定は必要なし。必要な締め付けトルクはロックリングの表面に刻印してあります(40N・mなどの数字)。

40N・mと指定されたロックリングを長さ20センチのモンキーレンチで締め付ける場合、レンチの端にかけるべき荷重は20キログラムほどになります。家庭用の体重計を使って、目盛りが20キログラムになるまで片手で押してみると、どれくらいの力加減が必要か把握しすくなると思います。

参考・Bandit250・締め付けトルクについて


スプロケット戻し工具には7〜11速対応の多段ギア用と、歯が厚いシングルギアのピスト用とがあります。購入時には必ず確認して下さい。

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ホイールハブベアリングのオーバーホール

ESCAPE R3のハブは700Cのスポーツ用としては低グレードなものですが(そりゃ車体丸ごと5万円で買えちゃうんですから当然です)、オーソドックスなカップアンドコーン式のボールベアリングですから、定期的に手入れをしてあげれば特に問題なく使えるはずです。作者は1,000〜2,000キロ走るごとにバラし、古いグリスを洗い流して新しいグリスを詰め、調整して締め直します。ESCAPEのように量販店で気軽に買うような自転車は納車整備のレベルもあまり期待出来ないですから、買ってすぐやるのもいいですね。この作者のR3も買ったばかりの時はグリスがちょっぴりしか入っていなくてガッカリでした。

それ以外にも、長時間雨の中を走った後では隙間から水が侵入して中のグリスを流してしまったり、中にたまった水が錆を発生させている事があるので、距離に関わらず早めに手入れします。長く大切に使おうと思うならばオーバーホール作業は必須でしょう。

2013年9月より、作者のESCAPE R3には純正ホイールに替えてシマノ製のWH-R501(500)が入っています。それに関するメンテナンス手順も別途書いてみました。

フロントハブの分解

ハブスパナを奥にかませてロックナットを外す

フロントホイールのハブはシンプルなので、最初のとっかかりとしてはやりやすい印象。まず左右どちらかのナットを分解します。厚みの薄いハブスパナを使って内側の玉押しが回らないよう固定し、そのうえで外側のロックナットをモンキーレンチ等で外します。ハブのシャフトに切ってあるネジは前後左右ともノーマルな正ネジなので、すべて反時計回りで緩みます。

ハブスパナのサイズはフロントが14ミリ。普通のスパナをグラインダーで薄く削って使っている人もいます。


水が侵入して赤く錆びたベアリング

フロントハブの鋼球の数は片側10個です。


リアハブの分解

リアホイールのフリーボディ側

リアホイールはまずスプロケットを外しておきます。

フリーボディ(スプロケットが付いていた部分)とは反対側のロックナットを、上記と同じ手順で分解します。フリーボディ側はナットが奥まっていてハブスパナが入りません。

ハブスパナのサイズはリア15ミリです。


リア側はフリーの反対側を分解してシャフトを抜く

リアの鋼球はフロントより1個少ない片側9個で、サイズも少し大きめです。


フリーボディ内側の角は危険

フリーボディ内側のエッジは面取り加工されていないむき出しの金属なので、不用意に触れると一発で切れて出血します。要注意!

洗浄、チェック、油脂補給

灯油で洗って古いグリスを落とす

取り出したシャフトやベアリング鋼球は灯油などできれいに洗浄します。ハブ側の玉受け部分も古いグリスをきれいにぬぐっておきます。


玉押しに筋が入るが実用上問題はない

ある程度乗った車体では、玉押しにうっすらと筋が入っていると思います。でも爪でなぞって段差を感じるような大きな傷がない限り、使用上特に問題はありません。ポチッとした小さな虫食いがあっても、組んで回してみると案外平気なものです。神経質になりすぎないように。


きれいになったハブの玉受け

きれいになったら、ハブ側にグリスを厚めに塗り込み、鋼球を順番に埋め込むように並べてゆきます。シャフトを入れてからでは狭くて鋼球が入りません。

作業中に裏返しても鋼球が落っこちないよう、並べた上からもある程度グリスを塗り込めておきます。あまりやりすぎると走行中に隙間からはみ出してきますが、適宜拭き取ればOKです。


汎用のリチウムグリス

作者は、その辺のホムセンで普通に売っているありふれたリチウムグリスを愛用しています。ロードレーサーに夢中だった頃は高価なナントカエースを使っていた事もありましたが、正直言ってそれほど差を感じた事はありません。色が違うだけで成分は同じなのでは?って気がしていたくらいです。

どんなグリスでも雨の中を一日走れば大半が流れて水やゴミが入ってしまいますし、生活の足たる自転車には惜しげなく使える汎用グリスが合っていると思います。


組み立てと調整

ダブルナット方式で調整する

あとは元通りシャフトを入れて、玉押しの締め加減を調整すれば終了。カップアンドコーン式のハブにとってはこの段階が一番気を使う部分です。

まず軽く締めて回転具合やガタの有無を確かめ、ハブスパナで玉押しが回らないよう固定し、ロックナットを締めます。最初の仮締めの段階でピタリと決まっていても、ロックナットをグイッと締め付けると玉押しが外側から微妙に押しつけられてきつくなります。その分を差し引くように考えつつ、少しずつ追い込みながら調整してゆきます。

この玉押しを調整する時、シャフトもいっしょにクルッと回ってしまうと調整量が把握しにくく、いつまでたってもキチッと決まりません。そこで裏側のロックナットにもう一本モンキーレンチをかませて、シャフトが余計な回転をしないよう両足で保持しながらやると、微妙な位置調整が短時間で確実に出来ます。プロの職人さんはアクスルバイスという特殊な工具を使ってシャフトを下から固定して作業しますが、これはその代わりです。


軸を指に乗せて転がり出さない程度に調整する

ハブの回転は少し抵抗がある程度が適正です。リア側はフリーボディや傘状のダストシールの接触抵抗があるせいで、フロント側よりどうしてもやや重たくなります。シャフトを手で動かしてもガタがなく、ゆっくり回転させてゴロゴロ感が目立たない程度になれば、まあ合格でしょう。

作者の基準は、シャフト両端を両手の人差し指の上に乗せただけの状態で、スポークを親指で軽く押して回転させ、シャフトが指の上で転がり出さない程度のスムーズさが得られればOK、とみなしています。


ESCAPE純正のホイールは回転が重くスムーズでないとよく言われますが、普通に走る分には全く問題ないし、価格帯を考えればそんなに悪いハブだとは思いません。そもそもホイールだけで何万円もするような高精度の上級製品と比較するのはフェアではありませんね・・。

 ただ絶対的な精度はやはり低く、毎回やるたびに微妙にフィーリングが変わったりするので、その都度加減する必要はあります。うまく調整するコツは、休みの日にゆっくり時間をかけて相手をしてあげる事と、杓子定規に厳しく追い込まない事。わずかな重みは乗っているうちになじんで消えてしまう事も多いですから、安物ハブ相手にあまり深く考え込まない事です。

フリーボディの分離

三角形のギザギザ

フリーボディはハブとは別のベアリングで支持されています。

シャフトを抜き出した状態でリアハブの中を覗くと、内側にスプライン(三角形のギザギザ)が切ってあるのが見えます。ここに太めの六角レンチをはめ込んで回すのですが、ESCAPE純正ホイールの場合、7/16インチという少し特殊なサイズの六角レンチが必要になります。


分離したフリーボディ

スプラインは奥の方にあるので、フリーボディ側から六角レンチの長い方の柄を突っ込み、短い方の柄にモンキーレンチ等をかませて、反時計回しにゆるめます。

最初はちょっと固いと思うので、グッ、グツ、と断続的にショックを与え、固着を引きはがすようなイメージで力を込めます。


ゴムシールをめくれば鋼球が見える

フリーボディ自体は分解不能ですが、回転部分の隙間にはまっているゴムシールをマイナスドライバーでめくると内部の鋼球が見えるので、新しくグリスを注入する位は出来ます。隙間が狭いので鋼球は取り出せません。


ゴムシールを戻す時、ねじれたり、奥に突っ込みすぎたりしないように注意です。このシールには表裏があります。

WH-R501のフリーボディ

2013年9月に新しく買ったシマノ WH-R500(501)のフリーボディも上記と同じ方法で外せました。こちらは入手の容易な10ミリの六角レンチで回せます。

ちなみにR3純正でもWH-R501でも、フリーボディはハブ本体に対して若干のガタがあり、ローギアの先端を指でつかんで押し引きすれば0.5ミリくらいの幅でカタカタと動きます。これは構造上どうしても出るもので、六角レンチでいくら締め付けても変化しません。よっぽど大きくグラついていない限り、気にする必要はないでしょう。


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カートリッジ式ボトムブラケットのオーバーホール

ESCAPE R3を始めとする最近のスポーツ車に広く使われているカートリッジ式ボトムブラケット(カートリッジBB)は、従来のカップ&コーン式BBと違って細かい調整やメンテナンスをしなくても長期間回転性能が維持出来る優れもの。普通に乗っていればたぶん10年くらいは平気で持つのではないでしょうか。

もし何らかの理由でおかしくなったらBBユニットを丸ごと交換するのが一般的で(R3のグレードなら2千円くらいで買えます)、わざわざユーザーの手でバラす必要などありません。むしろ無理にやると調子を悪くしたり壊してしまう可能性もあります・・。

でもそこは趣味の道具、ものは試しの精神でやってみました。

シャフトからクランクを抜く

フィキシングボルトを抜く

中心部のフィキシングボルトはカバーと一体型のキャップボルトになっています。これを回すには、やや大きめの8ミリの六角レンチが必要です。

フィキシングボルトは左右とも正ネジなので、反時計回しでゆるめます。


コッタレスクランク抜きでクランクを抜く

シャフトは一般的なスクエアテーパー式なので、クランクとの分離手順も同じです。

専用工具のコッタレスクランク抜きが必要です。


カートリッジBBを取り外す

専用工具でBBを抜く

クランクが外れたら、BBユニットが顔を出します。

ここで専用工具をもうひとつ。カートリッジBBリムーバーというのを使い、ギザギザ部分をBBの固定ワンにかませ、スパナで回します。


専用工具でBBを抜く

シマノ純正のカートリッジBBリムーバー工具は、六角部分の二面幅が32ミリもあるので、家庭用サイズのモンキーレンチではくわえきれないかもしれません。純正品にこだわらなければ、ハンドル付きで回しやすい工具も売っています。


チェーン側(右側)のBBワンは逆ネジになっているので、通常のネジとは逆、つまり時計回しでゆるめます。

BBの分解

専用工具でBBを抜く

BBの右側のワンはボディに圧入されていて簡単には分離出来ません。まずシャフトを万力でしっかり固定します。


木の板などをあてがってコツコツ叩く

ワンの縁に木の板などをあてがい、全周にわたって位置を変えつつ、上からハンマーでコツコツと叩いて少しずつ抜き取ります。ネジ山を絶対傷つけないよう慎重に・・。


ばらけた状態

無事にワンが抜けたら、中央の金属筒とベアリングがバラバラに分かれます。


BBのグリスアップ

細いドライバーでベアリングのシールを外す

ベアリングの外側にあるオレンジ色のシールを外します。細い精密ドライバーか千枚通しなどで引っ掛けてめくれば、わりと簡単に外せます。はめ込む時は上から指で押さえるだけでOK。シールには裏表があります。

内側のシールを外すにはベアリングのどちらか一方をシャフトから抜きとる必要がありますが、ベアリングプーラー等の特殊工具が必要ですし、横向きの圧力でベアリング内部を痛める可能性が高いですので、再使用を考えると躊躇してしまいます。よって内側のシールは残したままでなんとか作業を進めます。


きれいになったベアリング内部

スプレー式のパーツクリーナーや灯油などを使ってベアリング内部の古いグリスを念入りに洗い流します。灯油は揮発しにくいので、洗浄後はしっかり油分を切っておきます。エアダスターやエアガンがあれば最高ですが、自転車用のフロアポンプにボールアダプター(針のようなやつ)をはめ込んでも代用出来るでしょう。


グリスと注射器

グリスは例によって普通のリチウムグリス。これを注射器等を使ってすき間に押し込んでゆきます。注射器は百円ショップの化粧品コーナーに行けば入れ替え注入用のものが売っています。


グリスを注入する

グリスはたっぷり詰め込んでもかえって抵抗が増えてしまいますから、ほどほどにしておきます(この手のベアリングは新品でもそんなにぎっしりは入っていません)。作者が何度か試してみたところでは、リテーナー(鋼球を保持している金属枠)が埋まるくらいに片側からグリスを塗りつけておき、組み立てて1時間ほど走ってからもう一度開けてみたら、鋼球の回転によって表側のグリスが吸い込まれ、裏側まで回ってくれていました。シールもしっかりしているので、外に流れきってしまう事はまずないでしょう。


BBの組み立て

ワンの圧入

シールを2枚とも元に戻したら、打ち抜いた右ワンをふたたび叩いて圧入します。アダプター戻し工具を使って叩いてもいいのですが、ちょっぴり高さが足りずにシャフトの頭が出るのと、接触面のギザギザが痛んだりしたら次回分解する時に困ります。

あれこれ探してみたところ、手元にあった中古のママチャリ用ステムがちょうどいい直径でした。ステムを横向きにし、ハンドルを差し込む穴をワンにあてがって、上からハンマーでコツコツと少しずつ均一に叩いて入れてゆきます。反発音が硬質な音に変われば、奥まで達したしるしです。


左ワンはわずかに出っ張る

フレームへの組み付けはまず右側のワンから締めます。右ワンのフチがフレームに当たって止まるまできっちり締め付け、それから左ワンを締めます。位置がきちんと決まれば、左側のワンがフレームからほんの1ミリ前後出っ張った状態になるはずです。

それぞれの締め付けトルクは50〜70N・m程度。力いっぱいギュウギュウに締め付ける必要はありませんが、あんまりゆるいとペダルを漕いだ時にガタが出ますので、力加減には注意です。

その後クランクを元通り組み立てて、終了です。クランクのフィキシングボルトの締め付けトルクは30〜50N・mでOKです。

参考・Bandit250・締め付けトルクについて


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