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イグナイターの分解と修理

Bandit250を修理する上での最大の鬼門は、やはりイグナイターでしょう。リアシートの下に鎮座し、エンジンの点火制御を行う黒い箱。試しに分解してみようにも、ガッチリと固められていてそう簡単に中身を開いてはくれません。まさにブラックボックスといった趣です。

初期型のBandit250はもう製造されてから20年前後たっており、電装パーツの劣化が気になるところです。もし壊れてしまっても、スペアのイグナイターはそう簡単には手に入らないでしょう。(メーカー在庫も払底していると聞き及んでいます)

そんな折、なんとイグナイターのDIY修理を成功させた方からメールをいただきました。写真入りの詳細なレポートで、イグナイターの分解手順から必要なパーツリストまで網羅。同じBandit250ユーザーとして、この貴重な情報をぜひこの場で共有したいと考え、以下に紹介いたします。


ここに書かれているのは93年式Bandit250、つまり40馬力規制後モデルでの例です。45馬力の規制前モデルでも基本は同じですが、基板上のパーツ配置やパーツの規格がやや異なります。45馬力型イグナイターの中身についてはこわしてみました・イグナイターを参照してください。

(以下はNさんからのメールを元に再構成したものです)

必要なもの

電解コンデンサー
10μF 25v ×1個
10μF 50v ×2個
47μF 35v ×2個
※耐電圧(V値)は指定以上であればOK。
どれもパーツ屋さんで普通に手に入ります。1個あたり数十円程度。
その他
ラジオペンチ、カッター、半田ごてなど。

症状

バイクは1993年式Bandit250(40馬力型)です。セルスターターでエンジンがかかりません。しかし10メートルほど押しがけをすればかかります。

いったんかかるとエンジンは快調。スローも安定しており、吹き上がりもすこぶる快調です。低速のトルクも問題ありません。

エンジンを止めても、直後ならセル一発でかかります。

ところが、エンジンを止めて5分ぐらい経ってからかけようとすると、またセルではかかりません。2〜3メートル押しがけしてやると、すぐにかかります。

セルを回した時の音は以前と変わらなく回ってるように思えます。バッテリーは国産ユアサの新品に交換してから約3年、2万キロ経過。

参考事例リンク

イグナイターの分解

イグナイターをあける

プラスチックのブラックボックスに、基板はさかさまに取り付けてあります。

底面にドライバーを差し込めるぐらいの小さな穴が二箇所ついていますが、基盤はゴムのりで固定してあるため、ここからこじっても取り出せません。無理にやると基板やケースが壊れます。

まず底面をプラスチックカッターで切り取ります。そこで引き抜ければいいですが、私の場合はゴムのりが固着していたため、さらにコネクターと正反対の面を切り取る必要がありました。


イグナイターをあける

そこまで切るとボックスがコの字型となって左右に少し開けますので、両側面についている基盤のスライド・ガイドから基盤の片方をはずして上に持ち上げると、取り出せます。

(shun(作者)注・私の場合はそれでもダメで、側面の一方をカットする必要がありました。)


コンデンサーの交換

コンデンサーを取り外す

(shun(作者)注・スプリングと吸気の力を利用したハンダ吸い取り器があれば、よりスムーズに作業出来るかもしれません。電材屋さんに売っています)

コンデンサーの取り付け

作業中のNさん

修理後

結果はばっちりです。今までの症状が嘘のようにセルで一発で始動します。

(以上、情報及び写真提供・Nさん)

追記

バイクに限らず、何かの機器が故障する時は、全部がいっせいにおかしくなるわけではなく、内部のパーツが個別に劣化消耗してゆくうち、まずどこか一部分が期待される性能を発揮出来なくなり、ついには全体の機能不全、故障に波及するものです。つまり今回の電解コンデンサーがそれにあたります。

shun(作者)はかつて首都圏で大手電気会社に勤務していた事があり、機器の信頼性については業務上よく話題になりました。機器システムには平均故障間隔(Mean Time Between Failure=MTBF)という考え方があって、これが長いほど信頼性の高いシステムと言えます。これを高めるにはどうすればいいでしょうか?単純に考えれば、全てのパーツを考えうる限りの長寿命パーツで構成すればよいわけですが、生産性や部品調達コストなどの問題もあり、そう簡単ではありません。

個々の電子パーツには改善が難しい固有の特性があって、中でも電解コンデンサーは他の半導体や抵抗素子と比べて寿命が短い事で知られており、MTBFへの影響が最も大きいパーツとされていました。よって高信頼性が求められる機器では、設計段階で電解コンデンサーの数を減らしたり、他のものに置き換える試みが行われます。

もちろん、かけられるコストや機器の用途によっても対応に差が出ます。たとえば10年間故障しないスマートフォンを設計する事は可能かもしれませんが、一般的な買い替えサイクルや新技術開発のペースを考えれば、あまり意味がない行為と言えるでしょう。バイクでも1つのパーツが10数年も持てば十分ですし、特殊なパーツを使って製造コストをむやみに上げるのは、商品としても不適切でしょう。

幸いな事にshun(作者)のGJ74Aはかれこれ22年、8万キロ以上も快調に動き続けており、始動時の不調はまだ見られません。いつかイグナイターを修理すべき日が来るかもしれませんが、おそらくその時には上記の情報を元に、迷いなく作業が進められる事でしょう。

Nさん、貴重な情報をありがとうございました。