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エンジンオイルの交換

エンジンオイル交換用品一式

バイクメンテの要、エンジンオイルの交換手順を書いてみます。

一般的な交換サイクルは走行5千キロ程度(マニュアルの指定では6千キロ毎)、もしくは半年から1年以内に1回です。さらに2回に1回はオイルフィルターも新しく換えましょう。

とくべつ高価なオイルでなくてもいいですが、あまり安いものは油圧が上がりにくかったりするので、怪しげなものは買わない方がいいです。「安いオイルでもこまめに入れ換えれば大丈夫」という話をよく耳にしますが、安いオイルは初期性能自体が劣っているのでどんなに新しくてもエンジンによくない影響を残す可能性がありますし、交換サイクルを短くすればそのぶんお金もかかりますから結局はあまり意味がない行為です。

オイル交換の目的はエンジンを良い状態に保つ事であって、オイルそのものを新しく保つためではありません。エンジンオイルは人間で言えば血液と同じ。頑張ってちゃんとした品物を買うようにつとめましょう。

さらに言えば環境の事も考えて、やたらとムダな廃油を出すような行為は厳に慎むべきだと思います。バイクを大事にしたい気持ちはわかりますが、いたずらに短いサイクルで交換するのは控えましょう。排ガスの汚さや燃費の悪さと同じく、今時そういうのはちっとも自慢にならないはずです。


必要なもの

新しいエンジンオイル
必ず2輪用の4ストロークエンジンオイルで、指定グレードはSAE 10W-40です。使用する量はマニュアルではオイルのみ交換時2.7L、オイルフィルター同時交換で3Lです。とりあえず4L缶を買っておけば安心でしょう。1L缶をバラで買うより安めだし、他にもワイヤー潤滑などいろいろ使い道があります。余ったらきちんと栓をして押し入れの中にでも保管しておけば半年や1年くらいは保つので、次回のオイル交換に利用出来ます。
新しいオイルフィルター
新旧Bandit250/250V・カタナ250・COBRA・GSX-R250Rと共通品です。ほぼ千円くらい。ガスケットが同梱されているものがいいです。
17ミリのメガネレンチ
エンジン下部にあるオイルドレンプラグ(六角ボルト)の脱着用です。オープンスパナやモンキーレンチでは不可。
10ミリのメガネレンチ
同じくオイルフィルタのフタ用。
廃油受けバット
ホームセンターに数百円で売ってます。そのまま捨てられる廃油処理パックでもいいですね。
その他
軍手やウエス、新聞チラシを少々。

古いオイルの排出

しばらく暖機

バイクをホコリの立たない安定した場所に置き、スタンドをかけます。そしてエンジンを5分ほど回して止めます。これは暖まった方がオイルの出がよくなるからで、走行直後ですでに暖まっている場合は不要です。逆にあまり熱かったらヤケドするので、ある程度冷えてから作業してください。


フィラーキャップを開けておく

エンジンオイル注入口、フィラーキャップを開けておきます。


ドレンボルト

エンジンの最下部、オイルパンの底の左側にある大きな六角ボルトが、オイル排出のためのドレンプラグです。


ボルトを反時計回しで抜く

廃油受けを下に置き、17ミリのメガネレンチでドレンプラグをゆるめて外し、オイルを抜き取ります。


汚れたオイルが出てくる

ドレンプラグの脱着は必ずメガネレンチかボックスレンチを使います。オープンスパナやモンキーレンチではボルトの六角をナメる(つぶす)原因になります。外したドレンプラグやフィラーキャップはなくしたり砂がついたりしないようにきちんと管理。

オイルフィルターの交換

フィルターはエンジン前部

オイルを出している間に、オイルフィルターの交換をやります。これも消耗品ですからオイル交換2回につき1回は新品に換えるようにしましょう。手間はともかく、むつかしい作業ではないです。

オイルフィルターは、エンジン前部にある丸いフタの中にあります。


3つのナットを抜く

3つある袋ナットを、10ミリのメガネレンチでゆっくり、なるべく均一に外します。

このフタの裏側にはスプリングが仕込んであり、内部のフィルターを押さえつけていますから、指で押さえながら外さないと、いきなり弾けてネジ山を傷つける可能性があります。


多量のオイル漏れに注意

ここからもけっこうな量のオイルが出てきますから、エキパイ部分にボロのウエスか新聞紙を敷いておきます。


エキパイに当たって抜けない

さて、ナットを3つ外し終わったらフタがパカッと取れるはずですが、ボルトの先端に微妙に引っかかって外れない場合があります。これはノーマルマフラーの場合、4番のエキパイがフタの冷却フィンの出っ張りと当たってしまうからです(若干の個体差はあるようです)。

解決するためには、まず正攻法としてマフラーを取り外してしまう事。でもちょっとメンドクサイので、作者はいつも次のような手順でやってます。


マフラーの固定ネジを抜く

車体右後方のタンデムステップにある、マフラーの支持ボルトを抜きます。


マフラーを足でちょっと押し下げる

そして写真のような体勢で、左足をサイレンサーの上に置き、右手でフタをつかみます。

そして左足でもってマフラーを押し下げてやれば、フタと干渉している部分がほんの何ミリか動き、無事フタが外せる・・という寸法。

無理をすると、エキパイの接合部分やボルトが(ここは意外と弱いので)変形してしまう可能性がありますから、まず軽〜くやってみて、無理そうなら潔くあきらめ、マフラーを全部取り外す安全な手順をお薦めします。


邪魔なフィンを削ってみました 2007年9月7日

金ヤスリでフィンを少し削る

このフタを外すのに邪魔なフィンの角を削ってしまえば、上記のように危ない橋を渡らずともラクに脱着出来るようになるかも?・・というわけで、ヤスリで削ってみました。相手はアルミ合金なのでそう大した仕事ではありません。ホムセンや百均で売っている金ヤスリでゴリゴリ削れば、簡単に角がつぶせます。

今回削ったのはほんの2,3ミリですが、エキパイを押し下げずともスムーズに外せるようになりました。フタ自体には十分な厚みがありますから、強度的にもほとんど問題ないでしょう。


新しいオイルフィルターを入れる

フィルター本体が見えた width= 無事フタが外れたら、中から古いフィルターを取り出して新品と交換します。


外したところ width=
新品フィルター

穴のあいている方が奥向き。逆だとフタが閉まらなくなります。


ガスケットは大事に扱う

フタの内側に貼り付いているガスケット(黒い輪ゴムみたいなもの)はその都度新品交換がベストですが、フィルターに同梱されてない場合もあります。

そんな場合は、前のを再利用しましょう。1回くらいは大丈夫です。

フタを閉めるときはガスケットがミゾからはみ出して潰れないように注意してください。ちょっとでも潰れてすき間が出来ると、エンジンをかけて油圧がかかった途端、そこから盛大にオイルが吹き出して来ます。こうやって潰れたガスケットはもう2度と使えませんから、最初に取り外した古いガスケットも最後まで捨てない事。エンジンをかけてオイル漏れを確認し終わるまでは大事にとっておきましょう。でないとまたパーツショップに走るハメになります。

はみ出さないためのコツとして、まず最初にガスケットが収まるミゾに新しいオイルを少量流しておき、その上からガスケットをペタッと貼り付けるような感じで入れておけば、フタを垂直にした状態でもズレにくくなります。

元通りに閉められたら、フタの周囲やエキパイ部分にこぼれたオイルをきれいに拭きとって、完了です。


ボルト折れについて

オイルフィルタの部分に生えている3本のボルト(スタッドボルト)ですが、年数を経た車体では何かのはずみでポッキリ折れてしまう事が時々あります。このボルトは表側から単純にねじ込んであるだけですので、残った部分を利用してどうにかして回す事さえ出来れば、わりと簡単に抜けます。
交換するなら純正品がベストでしょう。3本合まとめて買ったって数百円ですし、ホームセンターで売っている全ネジはこういう部分に使うには質がよくないものが多いです。

新しいオイルの注入

きちんと締め込む

さて、もうオイルは抜けきっている頃でしょう。ドレンプラグを締め、新しいオイルを注入する準備をします。


オイルフィルターのフタをとめる袋ナットもそうですが、ボルト類は力一杯締め込んではダメ。レンチの端を握り、軽〜く、クッ、という程度で、十分規定トルクをクリアしているはずです。オイルドレンプラグの規定トルクは200-250kg・cmですが、長さ30cmのメガネレンチを使った場合、端を握って6.7〜8.3kgの重さ(力)を静かにかければOK。ご自分の握力(数十キロ)を意識してみると加減がわかりやすいかも。(参考:締め付けトルクについて

ガムテープで車体に固定

ところで・・

バイク屋さんでオイル交換の作業風景を見ていると、オイル缶からいったんオイルジョッキに移し、きちっと量を計ってから注入してくれます。

これがいかにもプロっぽい仕草なので、自分の家でもマネしたくなりますが、個人の場合そう頻繁にオイル交換なんかしませんから、この先何ヶ月か使わない間のオイルジョッキの保管をしっかりしておく必要があります。車庫の隅に置きっぱなしになんかしてたら、オイルで濡れた内側にホコリや虫がついてベタベタになり、新しいオイルを入れる際「うわっ、汚い!」・・となってしまう事があるのです。


広告紙でジョウゴを作る

要はオイルをこぼさずエンジン内部に適切な量を注入出来ればいいわけですから、こんな風に新聞広告を丸めて作ったジョウゴでも十分。お金もかからず、使ったあとは可燃ゴミに出すだけ。


オイルをゆっくり注入

オイル量は缶の重さでなんとなく計りながら、気泡が混じらないようにゆっくり入れます。半分を越えて、そろそろ規定量かな〜と思ったら、オイル点検窓に注意しながらさらにゆっくり。

そして窓のLラインを少し越えたあたりで一旦ストップし、フィラーキャップを締めます。


4輪用のオイルは使用しない

購入する際は必ず2輪用4ストロークエンジンオイルを選んでください。安く大量に買える等の理由から4輪用を使っている人が時々いますが、バイクと4輪ではエンジンの構造が違うので、使用されるオイルの成分も若干異なっています。

バイクでは、ピストンやバルブなどのエンジン部分・複雑な変速ギアが激しく噛み合うミッション・摩擦抵抗で回転力を接続するクラッチ板が同じ部屋の中にあり、1種類のエンジンオイルですべてを同時に潤滑しますが(BMWなどは例外)、4輪ではエンジンとミッションは完全に分かれており、それぞれに異なる種類のオイルが使われます。クラッチ板も4輪はオイルに触れない乾式が主ですが、バイクではごく一部を除いてエンジンオイルに浸っている湿式がほとんど。つまり4輪用エンジンオイルは変速ギアどうしが噛み合うせん断的な高圧力やクラッチ板の滑り、摩耗等についてあまり考慮されていません。これをそのままバイクに入れて使っていると、クラッチや変速機に不具合を生じる可能性があります。

種類の違うオイルは混ぜない

同じメーカーの同じ製品なら全く問題ないですが、いくら前回のぶんが余っているからといって銘柄や粘度・グレードの異なるオイルは混ぜない方が賢明です。世の中には混ぜる事を前提として作られ、それによって粘度や特性を自在に調整出来るオイルもあるようですが、かなり特殊な例でしょう。

オイル量のチェック

ふたたび暖機

エンジンを1分ほど動かして、新しいオイルを細部まで巡らせます。

回している間に例のオイルフィルター部分の漏れも忘れずチェックしてください。少しでも隙間があると、油圧がかかった途端に勢いよく吹き出してきます。


確認窓に注意

オイルが回ると油面が少し下がるので、エンジンを止めてからまたちょっと足します。でも止めた直後は油面が下がりすぎていますから、5分くらい置いてから足すのがいいです。焦って早めに足しちゃうと基準より多めになりがち。


油面は車体を垂直にして確認

オイル量の確認は、まずサイドスタンドで立てておき、右側からハンドルを引っぱって車体を起こし、垂直になった状態でオイル点検窓の油面をチェックします。手持ちで浮かした状態で車体を少し左右に振り、抵抗なくバランスがとれるあたりがおおむね垂直。ここでFとLの中間に油面が来るようオイルを調整すればOK。厳密な中間位置でなくても、車体をやや左右に振って、そこそこ収まっていれば平気です。地面の前後の傾斜によってもかなり違って見えますから、なるべく水平な場所を見つけておきましょう。


マニュアルや取説には「水平な場所で車体を垂直にする」としか書かれておらず、スタンドの指示は特にありません。センタースタンドではやや前下がりになるのと、地面の状態(微妙な傾斜、土にめり込む、小石を噛むなど)によっては必ずしも垂直にならないうえ、調整も出来ないのであまりうまくないと思います。

スポイトの要領で吸い出し

ちょっと入れすぎたかなと思ったら、細いパイプとオイル差し、シャンプー容器のポンプ等を使って、上の注入口からスポイトの要領で吸い出せばOK。

底のドレンプラグを抜くと一気にドバッと抜けて加減がしにくいし、あわてて締め込んでネジ山を傷つける事もありますから、ちょっと時間はかかりますが上からチビチビ抜いた方が安全。

パイプを突っ込むさい、砂などのゴミをつけないよう要注意です。


廃油の処分

廃油はちゃんと処分しましょう

古いエンジンオイルの処分は、ポイパックなどの処理剤で固めて、可燃ごみとして捨てるのが一般的ですが、自治体によって手順が違う場合もありますので、それぞれで適切な方法をとって、きちんと処分するようにしてください。

作者の場合、車庫に置いてある20リットルのペール缶にためておき、いっぱいになったら近所の馴染みのGSに持って行って、処分してもらっています。そんな場合はもちろん自分が乗ってきた車をちゃんと満タンにしてから帰るのが仁義というものでしょう。